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家を考えるA


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八ヶ岳・T邸のP&B(ポストアンドビーム)

ご主人は芸大で木彫を教え、奥さんは機織り、この芸術家Tさんご夫妻の家を、現在八ヶ岳山麓の別荘地に建築中で、この原稿が活字になっているころには完成しているはずである。
現在お二人とも55歳。定年で退職されるまでの残りの10年ほどは別荘として利用し、その後はここに永住するとのこと。定年後というのは、いろいろな拘束から解放されて、生き方を自由に選べる第二の人生。言うなれば、人生の果実を収穫し、楽しむ時期といえる。

Tさんとは土地探しの段階からご一緒し、八ヶ岳界隈のあちこちの別荘地を一緒に見て回った。
第二の人生を送る舞台となる敷地選びには、お二人とも真剣そのもの。価格はもちろん、敷地周辺の雰囲気、道路状況、近くにスーパーはあるか、バスの便は・・・といった生活の利便性など、検討する項目は多い。
いろいろ迷った末、原村のある別荘地を選んだ。敷地面積は337坪。景観は期待できないが、落ち着いて創作活動ができそうな環境だ。芸術家だけに、八ヶ岳美術館が、歩いても行ける範囲にあるのも気に入った理由の一つだった。


T邸のプランニング

どんなふうにするのか・・・、Tさん夫妻はまだ希望の家のイメージが固まっていなかった。ならば、実際の家を見ていただくのが一番と、これまで建てた家を案内することにした。最初に案内した蓼科の別荘に対しては、いま一つ反応が薄い。ではどんな家が希望なのかと悩んだ末、富士山麓に建てた朝霞スクエアを案内することにした。延べ1200坪もの大規模なログハウスではあるが、工法的にもデザイン的にも、いろいろな要素を含んだ建物なので、部分的にも気に入ったところがあれば、参考になるかと思い選んだのである。

前に案内した建物とは反応が違い、今度は興味津々の面持ち。どうやら丸太と漆喰調の白を組み合わせたP&Bがお二人の感性にぴったりだったようだ。もやもやとしたイメージでしかなかったものが、やっと焦点が合い、はっきりとした形となって、頭の中で像を結んだ様子。
設計の打ち合わせで何度か埼玉のご自宅を訪問し、不躾にならない範囲で、置かれている物、家具などをさりげなく拝見する。別荘に持ち込む予定の物は寸法を取らせていただく。具体的な希望を明確に持っておられるので、いざ望みの建物のイメージが固まった後は、プランニングの進みも速い。普通の人は、間取りを読めても、空間を把握するのは難しいものだが、彫刻をなさっているだけに、Tさんは空間を想像する能力があり、立体的に捕らえられる。要求するレベルが高いだけに、箕浦君も張り合いがあり、プランを進めていても楽しそうだった。

ワークショップをそれぞれに欲しい。寝室は2階に、それに隣接して広めのクローゼットを。
1階に畳の部屋を設け、床から20cmほど高くしたい。畳は琉球畳(寸法が普通の畳の半分で四角形)。アンティークのステンドグラスを何枚か所有していて、それをドアや壁にはめ込みたい・・・。希望をすべて入れた最初のプランは、大きすぎて予算を大分オーバーしそう。また、「二人で住むのに大きすぎると、掃除や何かで大変かな」とも考えて、縮小することにした。
木彫の仕事はリビングで十分できるのではないかと考え、それぞれにワークショップをというアイデアを変更しただけで、かなりの縮小となった
ある程度プランが進んだ段階からは、FAXのやりとりで結構進む。いろいろな意見や希望事項をFAXで送ってもらい、その意見を取り入れた修正プランをFAXで送る。
例えば、2月26日に送られてきたFAXには、24項目にわたって希望事項がびっしりとワープロで書かれている。その一部は次のとおり。

台所シンクのサイズを900mmに、位置を左に寄せて200mmほど開ける。
クローゼットのドアを引き戸に替える。
1階洗面台の形を、2階トイレと同じに。
玄関タイルはれんが調にしたい。
寝室のステンドグラスは壁面に付ける。

など、プランニングもかなり進んだ段階に入っているので、注文もより具体的になっている。


T邸の建設

Tさんの家は、K邸と同じく、大型のコンテナ2台を必要とした。スケジュール的な問題もあり、家具は、本体とは別に1ヶ月はど後に送らせることにした。その家具は、すべてこの家に合わせて設計して、エドの工場でシダーで作らせたものである。

5月19日、まずログと、そのほかの部材を積んだコンテナが現場に到着した。久しぶりに私が荷降ろしの現場に立ち会う。敷地は広いのだが、コンテナの搬入を禁じられているので、近くの広場を借りてそこにいったん降ろし、4トントラックでプストン輸送である。
その何日か後に現場い行ってみると、ログが見事に組み上がっている。見上げると、青空を背景にP&Bのログは堂々と建っていた。まだ家とは呼べない、いわば建物の骨格のみ。このログが組み上がった瞬間はなかなか迫力がある。
シダーのログ独特の色合いがよい。全体のバランスがよい。「これは素晴らしい家になるな、Tさんご夫婦もきっと気に入ってくれるに違いない」と確信した。

7月に入ると、この骨格のみの段階からどんどん形が見えてくる。次に行ったときは、下地の状態ではあるが外壁が組まれ、また、1週間ほどすると、今度はそこに漆喰(ジョリパット)が塗られ、外観はでき上がっている。こうして、今また一つの家が完成に近づき、その存在を現しつつある。

この家が、Tさんご夫妻の創作活動の場となり、彫刻や機織りの作品が生まれる。そしてまた、先生の生徒たち、子供たちとその仲間たち、多くの出会いをこの家が温かく見守っていくことだろう。


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